屋外にある五重塔の中で最小規模
室生寺の五重塔は、法隆寺、薬師寺に次いで何度も尋ねた塔である。
「弘法大師が一夜にして建てた」とも言われるように、五重塔としては規模が小さく、スマートな塔である。室生寺の奥の院に通じる高いところにあり、樹齢数百年と思われる杉の大木の林に囲まれて建っている。
この五重塔は、98年9月、台風7号で付近の杉の大木が倒れ五重目の屋根・北東側に直撃を受けるという大きな被害にあっている。
五重、四重、三重、二重、初重の屋根が無残な姿をさらした被害状況の報道で衝撃を受けたことを覚えている。しかし、五重塔本体は傾いた様子はなく堅固に建っていた。
私は、その被害の数ヶ月後、室生寺をたずねた。そのときには、修理の工事が始まっており五重塔は仮屋根に覆われていた。塔の周辺は台風被害の倒木がまだたくさん残っている状況にあり、五重塔に倒れ掛かった木の大きさ(太さ)をじかに見て驚いた。華奢な五重塔の総重量をその一本で上回るのではないかと思った程であった。
各重の屋根は大破したが本体は持ちこたえたわけだから、五重塔の強靭さに驚かされた。
2000年11月に、私と長女でたずねた。修復工事を終えた、すばらしい五重塔がそこにあった。(落慶法要2000年10月21日) 私は、03年8月に妻、長男の3人でまた訪れることになった。それくらい思い入れのある塔になっている。
建立年代 9世紀前半・奈良時代末から平安時代初め
三間五重塔婆 総高 16・1メートル
屋根 檜皮葺(ひわだぶき)
所在 奈良県宇陀郡室生村室生78
修復直後の五重塔 2000.11.25
2003.8 五重塔
倒れた杉の大木の根本 五重塔周辺 2000.11.25
室生川にかかる太鼓橋の前 妻・長男・私 2003.8.14